全ての記事へ

NGO共同声明「SOMPOが石炭火力新方針を発表~日本の損保初、しかしパリ協定の目標とは乖離~」を発表

SOMPOホールディングスが日本の大手損保で初めて石炭火力への引き受けに関する方針を公表したことを受けて、下記の通りNGO共同声明を発表しました。

2020年9月23日

NGO共同声明:SOMPOが石炭火力新方針を発表
~日本の損保初、しかしパリ協定の目標とは乖離~

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ

9月23日、日本の大手損害保険会社のひとつであるSOMPOホールディングス(以下SOMPO)が石炭火力発電への保険引受・投融資を制限する方針(※1)を発表しました。方針では「すでに保険引受・投融資を行うこと表明している案件除き、日本国内の石炭火力発電所の新規建設に関する保険引受・投融資は原則として行いません」と表明しています。石炭火力発電に関する保険引受方針を発表したことは、日本の損保業界初の取り組みであり、今回、SOMPOが方針発表に踏み切ったことを歓迎します。

しかし、SOMPOの方針では国内の新規石炭火力発電工事のみが対象となっており、海外案件や国内外の財物保険は対象となっていません。また「ただし、エネルギー政策等を踏まえ、一定以上の発電効率を有する設備については、温室効果ガスの排出削減等の環境負荷軽減対策や代替手段の有無等を確認のうえ、慎重に検討し対応する場合があります」という例外規定が含まれています。SOMPOは、今後、ベトナムのブンアン2石炭火力発電事業への保険引受が想定されますが、パリ協定の長期目標を達成するためには、先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要があります。世界では、すでに19の大手保険・再保険会社が石炭事業への引き受け停止、あるいは制限を表明しており、パリ協定の長期目標との整合性を確保するためには、SOMPOの方針では不十分です。

さらに、SOMPOの方針の対象は新規石炭火力発電建設への保険引受等に限定されており、石炭火力発電への依存度が高い企業や新規石炭火力発電所を計画中の企業向けの保険引受・株式/債券投資については対象としていません。気候危機を悪化させている石炭採掘や他の化石燃料関連事業についても、方針は示されていません。これらの点で、海外保険会社の投融資方針の水準(※2)と比べると、依然遅れをとっています。

したがって、新規石炭火力発電事業への保険引受については、建設工事に関わる保険だけでなく施設自体の保険引受に例外なく停止する方針を掲げるとともに、石炭火力発電や石炭採掘への依存度が高い企業や新規石炭火力発電所を計画中の企業への保険引受・株式/債券投資から撤退する方針を掲げるべきです。また、科学的知見およびパリ協定の目標に基づき、石炭のみならず、炭素排出量の多い他の化石燃料産業への投融資の抑制方針を掲げることが重要です。SOMPOには、ベトナムのブンアン2石炭火力発電事業への保険引受を行わないこと、並びに方針の強化を求めます。

また、日本の大手損保会社である東京海上ホールディングスとMS&ADホールディングスに対しても、同様の方針策定を求めます。

本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝
tanabe@jacses.org
国際環境NGO 350.org Japan、横山隆美
taka.yokoyama@350.org

※1:https://www.sompo-hd.com/~/media/hd/files/news/2020/20200923_1.pdf
※2:海外の保険会社の石炭方針については、Coal Policy Tool(https://coalpolicytool.org/)を参照ください。

Share this article