2022年5月27日
共同声明:
日本の金融業界初、SOMPOがオイルサンド開発・北極保護区の化石燃料事業の保険引受排除を発表
~東京海上、MS&ADも方針強化を~
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
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メコン・ウォッチ
Insure Our Future
5月27日、日本の大手損害保険会社の1つであるSOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPO)は、化石燃料事業への保険引き受けに関する新しい方針を発表し、石炭火力発電事業、炭鉱(一般炭)開発への新規の引受の停止、及びオイルサンド開発、北極野生生物国家保護区でのエネルギー採掘事業への新規の引受停止を表明しました(※1)。オイルサンド開発、北極野生生物国家保護区でのエネルギー事業への支援停止を表明したことは、日本の金融機関として初であり、私たちは日本における先駆的な取り組みを歓迎するとともに、国内の大手保険会社である東京海上ホールディングス(以下、東京海上)とMS&ADインシュアランスホールディングス(以下、MS&AD)に対しても、同水準以上の方針を早急に策定するよう要請します。
一方で、SOMPOの方針についても一層の方針強化が必要です。
1. 石炭に関する方針の抜け穴
SOMPOは、新しい方針の中で、いまだに「二酸化炭素回収・利用・貯留技術(CCS、CCUS)やアンモニア混焼等の革新的な技術を有するなど、パリ協定の実現に資する温室効果ガス削減効果が認められる場合には、慎重に検討し対応する場合があります」との例外規定を設けており、パリ協定の目標達成に整合しない可能性の高いアンモニア混焼等の革新的技術を用いる石炭火力発電所についても、将来的に保険を引き受ける余地を残しています(※3)。
2. 不十分な石油・ガス方針
オイルサンドや北極野生生物国家保護区以外の石油・ガス事業については停止方針が示されていない状況です。2021年5月に国際エネルギー機関が発表した報告書「Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector」によれば、あらゆる新規の化石燃料採掘事業は行うべきではなく、電力セクターにおいては世界全体で2040年に排出量をネットゼロにする必要があります(※4)。すでに、アクサやアリアンツを含む保険会社8社が、新規石油・ガス事業の保険引受を包括的に停止する方針を発表しています。したがって、2050年ネットゼロを達成するためには、あらゆる新規の化石燃料採掘および化石燃料発電の保険引受停止が必要になります。
3. 石炭事業の既存保険契約に関するフェーズアウト目標がない
石炭事業に対する既存保険契約のフェーズアウトについては、すでにアクサ、スイス再保険、アリアンツ、アクシスキャピタル、チューリッヒ等の保険会社が、自社のポートフォリオから石炭事業のエクスポージャーを世界全体で2040年までにゼロにする方針を掲げています。フェーズアウト期限に問題はあるものの、日本の3メガバンクは、すでに石炭火力事業に対する貸付残高ゼロ目標を掲げています。しかし、SOMPOも含め、日本の3大損保は何ら方針を示していません。
4. 引受ポートフォリオに関する排出量目標がない
2021年6月に開催された保険開発フォーラムでは、アントニオ・グテーレス国連事務総長が「損害保険会社は石炭及び化石燃料事業への保険引受を含めたポートフォリオにおけるネットゼロ目標を設定する必要があります」(※5)と述べています。SOMPOは、早急に引受ポートフォリオ排出量の長期目標・中期目標を掲げる必要があります。目標設定に課題はあるものの、日本の3メガバンクは電力セクター向け投融資ポートフォリオの排出量について、長期目標・中期目標を設定しています。
したがって、SOMPOに対して、化石燃料への保険引受および投融資に関する、今後のより一層の方針強化を求めます。また、東京海上とMS&ADに対しても、石油・ガス事業を含む新規化石燃料事業への保険引受の停止方針、既存の石炭事業に関するフェーズアウト目標、2050年ネットゼロ及びパリ協定に整合するポートフォリオ目標を策定するよう強く求めます。
脚注:
※1:https://www.sompo-hd.com/-/media/hd/files/doc/pdf/ir/2022/20220527.pdf?la=ja-JP
※2:https://www.oecd.org/trade/topics/export-credits/documents/Participants%20agreement%20on%20coal-fired%20power%20plants%20(02-11-2021).pdf
※3:https://www.kikonet.org/info/publication/hydrogen-ammonia
※4:International Energy Agency (IEA), (2021), Net Zero by 2050, A Roadmap for the Global Energy Sector, p. 20, IEA, Paris, https://iea.blob.core.windows.net/assets/0716bb9a-6138-4918-8023-cb24caa47794/NetZeroby2050-ARoadmapfortheGlobalEnergySector.pdf
※5:https://www.un.org/sg/en/content/sg/statement/2021-06-08/secretary-generals-closing-remarks-insurance-development-forum