2023年11月22日
共同声明:
MS&ADが日本の損保で初めて保険ポートフォリオ排出量の中期目標を設定
〜東京海上・SOMPOも早急にGHG削減目標設定を!〜
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
Insure Our Future
11月21日、日本の大手損害保険会社の1つであるMS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社(以下、MS&AD)は、保険引受先・投融資先に係る温室効果ガス(GHG)排出量を2030年度までに2019年度比で37%削減すると発表しました(※1)。保険引受ポートフォリオ排出量の中期目標を掲げたのは、日本の損害保険会社として初であり、私たちはMS&ADのこの目標設定を歓迎するとともに、東京海上ホールディングス株式会社(以下、東京海上)、SOMPOホールディングス株式会社(以下、SOMPO)に対しても、保険ポートフォリオ排出量の中期目標を早急に策定するよう要請します。
MS&ADは、削減目標として掲げている37%の数値について、「日本のNDC(国が決定する貢献)における2030年度GHG総排出量目標と2019年度同総排出量確報値から算出」したと述べています。しかし、Climate Action Trackerは、日本のNDCについてパリ協定の1.5度目標と整合的ではなく「不十分」であると評価しており(※2)、MS&ADは、今後、この目標を1.5度目標に整合するために最低限必要とする43%(※3)に修正していくことが求められます。また、国内主要取引先のみならず、海外取引先にも対象を拡大する必要があります。
日本の大手損害保険会社3社(東京海上・SOMPO・MS&AD)は、保険業界における2050年までのGHG排出ネットゼロを目指す国連主導の国際イニシアチブであるNZIA加盟時に、保険・再保険引受ポートフォリオの排出量ネットゼロ達成に向けた中期目標を2023年7月末までに公開することが求められていましたが、今年の春に米国で反ESG運動が加速したことを受け、3社は5月にNZIAを脱退しました。東京海上及びMS&ADは脱退に際してリリースの中で、NZIA脱退後も2050年ネットゼロの実現に向けて取り組むと述べていましたが、3社は当初の期限であった7月末を過ぎても中期目標を公表していませんでした。その後、東京海上日動は9月に中期目標を発表しましたが、エンゲージメント目標に留まり、保険引受ポートフォリオにおけるGHG削減目標の設定には至っていません。
したがって、保険引受ポートフォリオにおける排出量の中期目標をいまだに掲げていない東京海上及びSOMPOに対して、1.5度目標に整合した中期目標を早急に設定するよう強く求めます。
本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝/喜多毬香
tanabe@jacses.org / kita@jacses.org
注:
※1:https://www.ms-ad-hd.com/ja/news/irnews/irnews-20231121/main/00/link/20231121_ghghaishuturyousakugen.pdf
※2:https://climateactiontracker.org/countries/japan/policies-action/
※3:https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/