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グローバル・ウィーク・オブ・アクション 〜化石燃料開発の現場から保険会社に抗議の声〜

Insure Our Futureでは、2月26日から3月3日の一週間、「グローバル・ウィーク・オブ・アクション」を行いました。この一週間の間に、世界31カ国で、なんと100以上のアクションが行われ、世界中で何千人もの人々が大手保険会社に化石燃料事業からの撤退を求めました。#InsureOurFutureNOW はSNS上ても大きな話題となり、オンラインアクションにもたくさんの参加者が集まりました。

その中でも、世界中から大変な批判の的となった会社の一つが、国内最大シェアを有する損害保険会社、東京海上ホールディングスでした。私たち日本の消費者には馴染みのある保険会社、東京海上は、実は世界中の化石燃料事業に保険を提供しており、間接的に気候変動の悪化を引き起こしている会社です。2022年の化石燃料業界との取引額は約4750万ドルにものぼり、世界トップ15位の額となりました。

損害保険は化石燃料事業が進められる過程において需要な役割を担っており、保険なしでは化石燃料事業を進めることはできません。東京海上を含む多くの保険会社では、今だに気候変動や現地コミュニティーへの人権侵害を防ぐための保険の引受方針の強化が不十分です。

保険会社にEACOPプロジェクトからの撤退を求めるFridays for Future Uganda(ウガンダ)

東京海上が、これほどまでに世界中から批判された大きな理由の一つが、東アフリカ原油パイプライン、通称EACOPプロジェクトへの関与の可能性です。

EACOPは豊かな自然環境の破壊や現地コミュニティーへの深刻な人権侵害など、非常に懸念されている事業であることから、すでに世界の損害保険会社29社がこのプロジェクトへの保険提供をしないと発表していますが、東京海上は以前としてプロジェクト支援の余地を残しています。保険提供者が確定すれば、このEACOPプロジェクトが進行すると考えられるため、東京海上の対応はプロジェクトに反対する世界中の環境団体や人権団体、多くの一般市民から大きな注目を集めています。これまで数年に渡り、国内外の市民団体が東京海上に対し、このプロジェクトへの不参加の意思表明を求めてきましたが、東京海上は「個別の案件には答えられない」としかコメントしておらず、批判が高まっています。

Organization for Community Engagement (OCE)によるアクション(タンザニア)

今回のグローバル・ウィーク・オブ・アクションでは、JACSESと350 Japanによる東京海上本社前での抗議活動に加え、EACOPプロジェクト予定地であるタンザニアとウガンダを含むアフリカ諸国やヨーロッパにおいても、非常に多くの団体や市民が抗議のアクションを行いました。

さらに、東京海上への抗議の声は、アジアの国々からも上がりました。

インドネシアでは、東京海上が保険を提供していることが判明した石炭火力発電所ジャワ9、10号機のあるバンテンと、ジャワ1号機のあるカラワンでDon’t Gas Indonesiaネットワークが抗議のアクションを行いました。

Sigit Karyadi Budiono

氏のコメント(Don’t Gas Indonesia)

化石燃料施設の周辺住民によると、いくつかの懸念点があります。例えば、ジャワ 9、10号機の周辺では、多くの人々が急性呼吸器感染症を発症しており、石炭の粉塵が原因ではないかと疑われています。漁師たちは漁獲量の減少を訴えています。一方、この火力発電所での仕事は地元住民が優先して与えられているわけでもなく、地元の人々への恩恵はあまりありません。

ジャワ1号機のあるカラワンでは、学生グループが象徴的なモニュメントの前で、この事業に対する抗議のパフォーマンスを行いました。現地では、水資源の枯渇、大気汚染、周辺における漁獲量の減少などの問題が懸念されています。

学生グループによる抗議パフォーマンス(インドネシア、カラワン)

フィリピン、マニラの公園では、Asian Peoples Movement on Debt and Development (APMDD) が、「Insure Our Future, Not Fossil Fuels. (化石燃料事業から撤退し、私たちの未来を守って)」と書かれたプラカードを掲げ、メガフォンで抗議しました。

Lidy Nacpil

氏のコメント (APMDD)

東京海上やサムスン火災海上保険などの会社は、気候危機を悪化させることで、現地コミュニティに害を与えることをやめるべきです。これらの会社は、バタンガスLNG事業や他のアジア地域で行われている、数多くの化石燃料事業への保険引受を停止すべきです。

APMDDによる抗議アクション(フィリピン、マニラ)

また、温室効果ガスの排出量は非常に少ないにもかかわらず、気候変動による影響が最も懸念される国の一つ、バングラデッシュにおいても、Waterkeepers Bangladeshと多くの若者たちがアクションを行いました。彼らが自転車で向かった先は、マタバリ石炭火力発電所です。

JICAや住友商事などが関与しているマタバリ石炭火力発電所(フェーズ1)の周辺では、建設工事によりエビ養殖などで生計を立てていた多くの住民が生活の糧を失い、大きな問題となりました。国内外からの強い反対を受け、拡張工事(フェーズ2)は中止となったものの、輸入LNGによるガス火力発電事業への計画変更が懸念されています。

自転車でマタバリ石炭火力発電所に向かう若者たち(バングラデッシュ、マタバリ)

パキスタンでは、化石燃料事業の拡大による漁獲量への悪影響を懸念する漁業者団体Pakistan FisherFolk Forumや市民団体などおよそ200人が参加するデモが行われ、現地ではテレビや新聞などで報道されました。

化石燃料事業の拡大を支援する保険会社への抗議デモ(パキスタン、カラチ)

抗議の声は、韓国、ソウルからも上がります。韓国では、石炭火力事業からの脱却が大きな問題となっており、サムスン火災海上保険と東京海上に保険引受方針の強化を求め、Solutions for Our Climate (SFOC)がアクションを行いました。

クァンファムン広場にてアクションを行うSFOC(ソウル、韓国)

大手保険会社が私たちの未来を守るために行動を起こすまで、Insure Our Futureと思いを共にする世界中の人々による活動は続きます。

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