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Rio Grande LNG 事業ファクトシート

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)がRio Grande LNGの問題点をまとめたファクトシートを発表しました。主な要点は以下です。

1)温室効果ガス(GHG)の排出による気候変動の悪化

LNGは燃焼時の温室効果ガス(GHG)排出量が低いため、低排出燃料という見方が一般的になりましたが、近年の調査により、LNGの生産、供給、輸送など、ライフサイクル全体を考慮した場合、気候変動に与える影響は石炭の24倍に及ぶということがわかってきました。完成すればRio Grande LNGはライフサイクル全体で、1億6,300万トンのCO2を毎年排出すると考えられており、これは石炭火力発電所44基分の排出量に相当します。事業者は、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)により、90%以上のCO2が削減されると謳っていますが、これには、ガスの冷却過程における排出(6~7%)しか考慮されておらず、ライフサイクル全体から見ればCCSによって削減されるCO2はごくわずかです。

2)先住民族の権利侵害

先住民族カリソ・コメクルード族は、Rio Grande LNGの建設地が彼らの聖域であるGarcia Pastureの一部であると主張し、建設に強く反対しています。事業者は彼らとの対話にこれまで一切応じておらず、これは国連が推奨する「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意(FPIC)」に反します。現地の国立公園管理局も、LNGの建設工事にって地中の歴史的遺産が破壊される可能性があることに懸念を示しました。

3)地元住民への影響

Rio Grande LNG周辺地域では、地元住民の94%がラテンアメリカ系の有色人種であり、多くの人々が南テキサスやメキシコの先住民族にルーツを持っていると考えられています。Rio Grande LNGから排出されるPM2.5等の有害物質による健康被害は、コミュニティに不均等な影響をもたらすことが懸念されます。さらにLNGの建設は、地元の漁業やエコツーリズムにも悪影響を及ぼすと考えられます。建設地の周辺では、スペースX発射台からのロケットの発射に伴う破片が広範囲に飛散する事故が多発しており、LNG建設地近辺にも落下しています。地元住民は、この破片がLNG施設に落下する可能性についても懸念しています。

4)生態系の破壊

施設の建設により、周辺の湿地、草原、原生林の生態系を不可逆的に破壊する可能性が指摘されています。なお、建設地はラグーナ・アタスコサ国立野生動物保護区に隣接していることから、建設予定地を含むより包括的な保護管理が行われることが理想となります。

ファクトシートはこちらからダウンロードしていただけます。

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