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東京海上は未だEACOPへの関与否定せず〜ウガンダ出身の活動家ヒルダさんが見た現地〜

現在建設が計画されている東アフリカ原油パイプライン(EACOP)プロジェクトは、生態系の破壊、現地住民の人権問題、大量のCO2排出などの懸念が強く、世界中から計画の中止を求める声が集まっています。

温室効果ガスの排出による気候変動の大きな原因となっている化石燃料事業は、損害保険なくしては進められません。そのため、損害保険会社は環境問題において非常に重要な役割を担っています。中でも、東京海上グループの化石燃料事業者との取引額は世界15位であり、EACOPへの関与が懸念されています。東京海上のような大手保険会社が保険を提供するかどうかは、EACOPの実現を左右するだけの力を持っています。


2024年2月、東京海上を含む大手保険会社に化石燃料事業からの撤退を求めて、世界各地でグローバル・ウィーク・オブ・アクション(GWA)が行われました。これを受けて3月、東京海上グループは新たな気候ポリシーを発表しました。しかし、重要な争議点のひとつであったEACOPへの関与否定は含まれておらず、残念ながら十分とは認められない内容でした。

このプロジェクトですでに、現地コミュニティに対する人権侵害、生態系の破壊など深刻な影響が出ており、稼働すれば年間約3300万トンという大量のCO2を排出することになります。

まず第一に懸念されるのがパイプの建設による自然環境および生態系破壊のリスクです。全長1443kmのパイプ建設が予定されているウガンダ・タンザニア間には、希少な野生生物が生息するエリアや、約4千万人の生活を支える水源が含まれプロジェクトが進められれば、現地の生態系に深刻な悪影響を与えることになります。

さらに、この計画は現地住民のコミュニティにも甚大な影響を及ぼします。EACOPプロジェクトでは現地住民の生活に欠かせない資源の汚染が懸念されます。このプロジェクトにより多くの現地住民が、住み慣れた土地を離れ、強制的に立ちのきを余儀なくされることとなります。実際に、ウガンダとタンザニアではすでに数千人の住民が強制移住を強いられる事態となっており、それぞれの国で100以上の村が損失しています。

ウガンダの農地で育ったヒルダさんは、気候変動が現地コミュニティにもたらす影響を間近に見てきたと話します。

ヒルダさんの育った村は、ビクトリア湖の近隣に位置し、バナナ、グアバ、豆、キャッサバ、サトウキビ、コーヒーなどの栽培を行っていました。彼女が気候変動の影響を意識したきっかけは、大学での学びと、ある年、かつてないほどの雨を経験したことでした。連日連夜、畑を襲う大雨と強風により作物が救う余地もないほどに荒らされ、さらに洪水によって道路が分断されたことにより、子どもたちは何ヶ月もの間、学校に通えない状態だったといいます。

EACOPが保険を得て建設を進められれば、このパイプは200の河川を横断し、ビクトリア湖の流域を通過することになります。世界で2番目に大きな淡水湖であるビクトリア湖は、4千万人以上の人々の生活を支え、近隣には数多くの野生動物が生息しています。もしパイプから水源に石油が流出した場合、彼らの生活はどうなってしまうのでしょうか。

このように、EACOPが与える自然環境と現地コミュニティへの悪影響は取り返しのつかない深刻なものです。すでに他国では、スイスのチューリッヒ保険、フランスのアクサ生命など、数多くの大手保険会社がプロジェクトに関与しない意志を表明しており、国内においても3メガバンク全てがこのプロジェクトへの関与を否定しているにもかかわらず、東京海上は未だこの意志を表明するにいたっていません。

保険会社の本来の役割は、人々を危険なリスクから守ることです。Insure Our Futureは、東京海上グループが世界の大手保険会社と足並みをそろえ、EACOPプロジェクトへの保険提供を否定する方針を早急に発表することを強く求めます。

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