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NGO・市民団体28団体がSOMPOにリオ・グランデLNG事業の保険引受の停止を求める共同要請書に署名

Insure Our Futureは本日、米国リオ・グランデLNG事業の保険引受の停止等を求める共同要請書をSOMPOホールディングスに送付しました。

米国テキサス州で計画されているリオ・グランデLNGの建設に関して、現地の先住民族、コミュニティ、複数の市町村および様々な市民団体やNGOは長年に渡り反対活動を行ってきました。この活動を受け、例えばフランスの銀行BNPパリバソシエテ・ジェネラルは、この事業への財政的支援を中止し、その他の主要なヨーロッパの銀行についても、LNG輸出事業への融資を制限する方針を採用しています

SOMPOホールディングスは先日、リオ・グランデLNGに保険を提供することで、事業の実現を手助けしている損害保険会社の一つであることが、環境NGOの調査により判明しました。今回、様々な国のNGOや市民団体28団体が、SOMPOホールディングスにリオ・グランデLNG事業の保険引受の停止を求める共同要請書に署名しました。

私たちの主な懸念点は、以下の3点です。

1. 先住民族の権利侵害

リオ・グランデLNG事業の建設予定地には、現地の先住民族であるカリゾ・コメクルド部族の聖地、ガルシア牧場が含まれています。ガルシア牧場は国の歴史的地域として登録されており、カリゾ・コメクルド部族の埋葬地、村の遺跡、独立した貝殻の加工場所、(外部文化との)接触期の遺物が地中に眠っていると考えられています。一方、リオ・グランデLNGの建設予定地では、すでに整地作業が始まっており、歴史的埋蔵物の破壊が懸念されます。ガルシア牧場は2022年、ワールド・モニュメント財団 (WMF)によって、「危機に瀕した歴史地域」として指定されました。

リオ・グランデLNG事業はこれまで、カリゾ・コメクルド部族と協議を一切行っておらず、これは先住民族の権利保護のための「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」の原則に反しており、国際連合の「先住民族の権利に関する宣言」によって、国際規範で保証されている先住民族の権利の侵害に当たります。

2. 2050年ネットゼロ達成のためには、新規の化石燃料施設の建設中止が必要

気候変動の影響を十分に抑えるためには、世界の平均気温の上昇を1.5C以下に抑える必要があり、新規の化石燃料事業の建設を早急に中止しなければ、この目標の達成は困難になると考えられています。液化天然ガス(LNG)は、より温室効果が低い燃料であるという見解が一部で存在しますが、LNGのおよそ90%以上が二酸化炭素の80倍以上の温室効果をもたらすメタンで構成されています。最近の研究では、採掘による上流でのメタンの漏洩や、輸送中のボイル・オフにより、LNGは石炭と同等またはそれ以上に気候変動を悪化させることが分かっています。環境NGOシエラクラブの調べによると、ライフサイクル全体での排出を考慮する場合、リオ・グランデ溪谷で計画されている2つのLNG事業、リオ・グランデLNG事業およびテキサスLNG事業からの温室効果ガス(GHG)の年間排出量は、石炭火力発電50基の年間排出量、または約4620万台のガソリン車の年間排出量に相当します。また、計画されている採掘作業の拡大に伴い、フラッキングの影響による水質・大気汚染、地域住民の健康被害、メタンの漏洩がさらに増加すると考えられます。

このように、メタンガスがトランジション電力として使用される場合の高いリスクと比較し、風力発電、太陽光発電および蓄電技術は、すでに利用可能で競争力のあるゼロ・エミッションの選択肢として成長を遂げています。気候変動に関する様々な国際目標を達成するためには、新規のメタンガスの輸出ターミナルの建設を中止する必要があります。

3. 生態系の破壊、地元経済への悪影響、気候変動における不正義の拡大など

リオ・グランデLNG事業、および同時にリオ・グランデ地域で計画されている、テキサスLNG事業やリオ・ブラボー・パイプライン事業が実現すれば、1)手付かずの原生的な湿原の埋め立て、2)2つの国立野生生物保護区の汚染、3)希少種の移動のために設置された生物回廊の分断などによる、現地の生態系への悪影響が懸念されています。施設の建設による生息地の減少、LNG輸送船の往来や騒音などの影響により、オセロット、ノーザン・アプロマド・ファルコン、ライスクジラ、ケンプヒメウミガメなど、複数の絶滅危惧種に「恒久的かつ重大な」影響を与える可能性が指摘されています。

さらにこれらの事業は、何千トンもの発がん性のある有害汚染物質の最大の排出源となると考えられており、現地の人々への健康被害が懸念されています。建設が予定されている地域には、低所得者層、先住民、移民、有色人種など、社会的弱者やマイノリティ・グループに属する人々が多く居住しています。これらの事業は、このようなコミュニティの人々に対し、不均等な影響を与え、地域格差を助長することが懸念されています。また、地元の経済にとって重要である漁業、エビ漁業、エコツーリズムなどの産業にも、悪影響を及ぼすことが予想されます。

バイデン大統領は先日、世界の気候とコミュニティへの影響が正しく評価されるまで、LNG輸出ターミナルの認可を一時的に停止する措置をとることを発表しました。残念ながらリオ・グランデ地域で計画されている事業は、すでに認証を受けてしまっているため、この措置の影響を受けないものの、これらの事業が自然環境と現地のコミュニティにもたらす悪影響は甚大です。

これらの懸念点から、私たちがSOMPOホールディングスに求めることは以下です。

  1. リオ・グランデ LNGの保険引受を停止し、NextDecadeへの投資を撤退させること。
  2.  SOMPOホールディングスのクライアントによる先住民族の権利保護の基準として、「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」の遵守を採用すること。
  3. 包括的な石油・ガスの保険引受停止の方針を導入すること。

Insure Our Futureでは今後も、国内外のパートナー団体とともに、リオ・グランデ LNGの保険引受を行う保険会社に対する働きかけを行っていきます。

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