大手保険会社の年次株主総会でLNG事業からの撤退を要請
2024年6月24日(東京)
本日、SOMPOホールディングス株式会社(以下SOMPO)の年次株主総会が開催され、会場前でレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)や「環境・持続社会」研究センター(JACSES)を含む環境NGOが、リオ・グランデLNG事業の保険引き受け停止を要請しました。6月20日には、アメリカ、日本を含む国内外28の市民団体やNGOがSOMPOのCEO・奥村幹夫氏宛てにリオ・グランデLNG事業の保険引受の停止を求める共同要請書を提出しています。一連の抗議運動は、米国・テキサス州ブラウンズビルで計画されているLNG輸出基地、およびその他すべての石油、ガス、石炭事業の保険引受および投資を中止するよう求めるものです。
リオ・グランデLNG事業の建設予定地には、現地の先住民族であるカリゾ・コメクルド部族の聖地が含まれています。この地域には埋葬地、村の遺跡、貝殻の加工所などが含まれ、このような神聖な土地で現地先住民族の同意なく建設を進めることは、国連の「先住民族の権利に関する宣言」で保証されている先住民族の権利の侵害に当たります。
また、リオ・グランデLNG事業の年間温室効果ガス排出量は、石炭発電所43基分に相当することが分かっています。これにより、近隣地域の大気汚染、水汚染が懸念されるほか、オセロット、ノーザン・アプロマド・ファルコン、ライスクジラ、ケンプヒメウミガメなどの絶滅危惧種に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
Bekah Hinojosa(南テキサス環境正義ネットワーク)は、「私たちのコミュニティはカリゾ・コメクルド部族とともに、リオ・グランデLNG事業をはじめとするこの地域におけるLNG施設に対し、明確に反対してきました。このような化石燃料事業は、私たちの地域環境を汚染するだけでなく、漁業やエビ漁に依存する私たちの生活様式をも破壊します。SOMPOがこの事業への支援を続けるということは、低所得の有色人種や先住民族のコミュニティに企業の意向を強要し、環境汚染を押し付けることを意味します。SOMPOはリオ・グランデLNG事業から直ちに撤退しなければなりません。」と述べています。
Ruth Breech(レインフォレスト・アクション・ネットワーク 気候変動・エネルギー シニアキャンペーナー)は、「気候変動への影響とリスクを真剣に考慮しているのであれば、SOMPOは化石燃料事業の引受と支援を停止すべきです。SOMPOは、米国テキサス州南部で計画されている天然ガス輸出基地、リオ・グランデLNG事業に保険を提供する主な会社の一つです。本事業の建設地は未開発の海岸地帯であり、先住民の聖地や湿地帯、漁業コミュニティの生活に悪影響を及ぼすものです。SOMPOはリオ・グランデLNG事業への支援を打ち切ることで、具体的な行動を今日にでも起こすことができます。」と述べています。
SOMPOは2024年6月21日、北極圏における化石燃料採掘事業の保険引受および投資を停止する地域を拡大し*1、さらに石炭を主業とする会社*2の審査基準を厳格化する新たな方針を発表しました。
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)の持続可能な開発と援助プログラムディレクターである田辺有輝は、「SOMPOの石油・ガスに関する方針は、停止対象が、オイルサンド及び北極圏監視評価プログラム(AMAP)でのエネルギー採掘活動と極めて限定的であり、今後も大量の温室効果ガスを排出する化石燃料事業に対して保険引受を行う余地を残しており、パリ協定1.5度目標に整合していません。SOMPOに対しては、リオ・グランデLNG事業を含む新規化石燃料事業への保険引受停止を強く要請します。」と述べています。
SOMPOの化石燃料プロジェクトの保険引受は、気候変動への抜本的な対策の欠如のみならず、現地における人権問題にも加担しており、これはSOMPOホールディングスの『グループ人間尊重ポリシー』に反するものです。私たちInsure Our Futureは引き続き、化石燃料に関与する保険会社に対し、気候変動の不正義に誠実に対応することを求めていきます。
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注:
*1 北極圏監視評価プログラム(AMAP、Arctic Monitoring and Assessment Programme)エリア(ノルウェー域内は除く)でのエネルギー採掘活動について、新規の保険引受および投融資は行わない
*2 収入の20%以上を石炭火力発電、一般炭鉱山、オイルサンドの採掘から得ている企業、または 20%以上のエネルギーを石炭で発電している企業