2025年6月23日
プレスリリース:
世界の主要18保険会社・10銀行がアラスカLNG事業を支援対象外にしていることが判明
~環境NGOが東京海上株主総会の会場前で方針順守を要請~
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO FoE Japan
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)
Oil Change International
米国で計画中のアラスカLNG事業について、フランスの環境NGOであるReclaim Financeのデータベース「Oil and Gas Policy Tracker」(※1)を用いて調査したところ、アリアンツやアクサや日本の3大損保を含む世界の主要保険会社18社及び銀行10行が、アラスカLNG事業を含む北極圏での化石燃料事業を支援対象外にしていることが判明しました。
表:アラスカLNG事業を含む北極圏での化石燃料事業を支援対象外とする方針がある世界の主要保険会社及び銀行・保険会社
アラスカLNG事業は、天然ガスをアラスカ州北部のノース・スロープで採掘し、南部のニキスキLNG基地まで約1300キロのパイプラインで輸送し、液化した後に輸出する計画です。今年2月に開催された日米首脳会談では、日本が米国からのLNG輸入を拡大し、本事業を推進することが合意されています(※2)。
しかし、国際エネルギー機関(IEA)は2023年の報告書「Net Zero Roadmap: A Global Pathway to Keep the 1.5 °C Goal in Reach」(※3)で、2050年までに温室効果ガス排出のネットゼロを達成するには、新規の化石燃料採掘を行う余地はないとの2021年報告書の結論を再び示しました。したがって、アラスカLNG事業はパリ協定の1.5 °C目標に整合しません。
本事業で天然ガスの掘削地とされるノース・スロープは、先住民族であるグィッチン族の伝統的生活圏であり、多様な野生動物が生息する手付かずの自然が残る北極圏野生生物国家保護区(ANWR)に隣接しています。この地域でのガス採掘は深刻な人権侵害及び環境破壊を及ぼすリスクがあります(※4)。北極圏でのガス採掘は、事故対応技術が完全に確立していません(※5)。先日、日本の大手電力会社のJERAはアラスカLNG事業への関心表明を行いましたが、世界の主要保険会社18社が保険引受の対象外としている中、保険会社が自らの方針通りに行動すれば本事業は実施不可能です。
東京海上は、北緯66度33分以北の北極圏における石油・ガスの採掘事業に関して、新規の保険引受・投融資を停止する方針を既に掲げており、北緯69度03分に位置するノース・スロープも保険引受の対象外です(※6)。
6月23日に開催された日本最大手の損保である東京海上ホールディングス株式会社(以下、東京海上)の年次株主総会の会場前では、環境NGOが、株主にに対して東京海上がアラスカLNG事業を含む化石燃料事業への保険を停止するよう求めるアクションを行いました。
したがって、東京海上に対して、アラスカLNG事業を含む化石燃料事業への保険引受停止を強く要請します。
注:
※1:https://oilgaspolicytracker.org/
※2:https://jacses.org/2625/
※3:https://www.iea.org/reports/net-zero-roadmap-a-global-pathway-to-keep-the-15-0c-goal-in-reach
※4:https://earthjustice.org/case/alaska-lng-project
※5:https://www.unii.ac.jp/erina-unp/archive/wp-content/uploads/2014/01/pp11810_tssc.pdf
※6:https://www.tokiomarinehd.com/sustainability/environmental_social_risks.html