2023年11月10日
プレスリリース：
東京・お台場で開催された保険監督者国際機構（IAIS）の年次総会にて
環境NGOが共同署名提出・アクション実施
〜保険会社の脱化石燃料を促す枠組みづくりを要請〜
「環境・持続社会」研究センター（JACSES）
Insure Our Future
11月9日及び10日、世界の200以上の国・地域の保険監督当局から構成され、保険監督・規制に関する国際基準の策定等を行う「保険監督者国際機構（以下、IAIS）」の年次総会・年次コンファレンスが、金融庁の主催により、ヒルトン東京お台場にて開催されました（※1）。会議には、環境NGOスタッフ2名が参加し、IAISに対し保険会社が早急に脱化石燃料に移行するよう促す枠組みづくり等を求める国内外NGO33団体の共同署名レター（※2）をIAIS事務局に手渡しました。また、9日には会場付近において、バナーを持ち、アピール活動を行いました。
共同署名を手渡した際、IAISからは移行計画の基準を設定することについて、2024年に国連開発計画（UNDP）の持続可能な保険フォーラム（Susitanable Insurance Forum）と共同で、保険会社の移行計画に関する保険監督当局の役割について検討作業を行うことを検討していることが共有されました。しかし、どの程度のスピード感を持って検討を進めていくのかについては疑問が残ります。また、強制力のある枠組みづくりについては消極的な印象を受けました。
当初、保険会社のネットゼロを推進する国際イニシアチブであるNet-Zero Insurance Alliance（以下、NZIA）が、加盟保険会社に対して保険・再保険引受ポートフォリオの排出量ネットゼロ達成に向けた中期目標の設定を促す「目標設定プロトコルのバージョン1.0（NZIA Target-Setting Protocol Version 1.0（※3）」を2023年1月に公表し、NZIA加盟企業は、2023年7月末までに、中期目標の設定・開示することを求められていました。しかし、今年春に米国で反ESG運動が加速したことにより、加盟企業30社中21社が脱退し、現在NZIAの枠組みは十分に機能していない状態です。IAISは、保険監督・規制に関する国際基準の策定を担っていますが、未だに保険会社の化石燃料事業からの撤退を促す効力のある基準・ガイダンスの策定には至っていません。
また、会場前では、ウガンダとタンザニアを結ぶ全長1443kmの世界最長の加熱式原油パイプライン建設計画であり、石油生産による大量のCO2排出や生態系破壊、現地住民への人権侵害等の懸念の声が上がっている「東アフリカ原油パイプライン（EACOP）」について、再三にわたる国内外の環境NGOからの要請にも応えず、いまだに事業の保険引受者としての関与の可能性を否定していない東京海上ホールディングス株式会社（以下、東京海上）に対し、保険引受停止を求めるアクションも行われました。既にチューリッヒ、アクサ、アリアンツ、ミュンヘン再保険等の保険会社23社が同プロジェクトへの関与を否定しています（※4）。EACOPへのファイナンスに関しては、2023年6月に三菱UFJファイナンシャル・グループが「支援に関与していない」と表明したことにより、大手邦銀3行全てが同事業と距離をとっていることが明らかになりました。
2023年9月に国際エネルギー機関（IEA）が発表した報告書「Net Zero Roadmap A Global Pathway to Keep the 1.5°C Goal in Reach（※5）」では、2050年ネットゼロを達成するためには、2023年以降に従来型石油・ガス事業の新規開発を行うべきではないと指摘されています。東京海上に対しては、EACOP事業を含む新規化石燃料事業への保険引受停止を強く要請します。
注：
※1：https://www.iaisweb.org/news-and-events/2023tokyo/
※2：https://global.insure-our-future.com/open-letter-demanding-climate-risk-regulatory-action-from-the-international-association-of-insurance-supervisors/
※3：https://www.unepfi.org/wordpress/wp-content/uploads/2023/01/NZIA-Target-Setting-Protocol-Version-1.0.pdf
※4： https://www.stopeacop.net/insurers-checklist
※5：
https://iea.blob.core.windows.net/assets/13dab083-08c3-4dfd-a887-42a3ebe533bc/NetZeroRoadmap_AGlobalPathwaytoKeepthe1.5CGoalinReach-2023Update.pdf
本件に関する問い合わせ先：
「環境・持続社会」研究センター（JACSES） 喜多毬香（kita@jacses.org）
