東京海上、MS&AD、SOMPO、AIGを含む大手損害保険会社4社が、2024年10月より個人向けの火災保険の保険料を引き上げると発表しました。火災保険料引き上げの傾向は過去5年間で顕著化しており、今回の引き上げ幅は全国平均で13%と過去最大となります。
自然災害の増加で火災保険料が上昇
火災保険の保険料引き上げの背景には、気候変動により相次ぐ自然災害の影響があります。各地で異常気象が頻発し、豪雨や台風、山火事などの自然災害が多発しているためです。例えば、1時間の降水量が50mmを超える短時間強雨の発生頻度は、1976年以降の10年と直近の10年を比較すると、約1.4倍に増加しています。このような自然災害の増加により、保険会社は想定以上の保険金を支払う事態となり、その負担を補うために保険料を引き上げる必要が生じているのです。
また、保険料の引き上げだけでなく保険期間の短縮も行われています。これは、気候変動により長期的な自然災害のリスクの見通しを立てることが困難になっているためです。例えば、2014年の保険料改定時には、最長36年間の保険期間が10年間に短縮されました。
今回の改定後の保険料は地域ごとの災害リスクに応じて設定されているため、特に災害リスクの高い地域の消費者にとっては負担が大きくなります。火災保険は通常、長期間にわたって更新し続けるため、今後もさらに異常気象が多発すれば、保険料がさらに高騰し、私たち消費者の生活を圧迫する可能性があります。
異常気象に伴う火災保険料の値上げは、日本だけで起こっている問題ではありません。オーストラリアやアメリカの一部地域では、気候変動による災害リスクが増したことを理由に、急激な保険料の値上げを行う会社や住宅の火災保険の提供から撤退する会社が続出し、大きな問題となっています。日本の最大手損保である東京海上も、米国カリフォルニア州での山火事の多発のため、同州における個人向け新規火災保険の引受を2026年に停止することを発表しました。
損害保険会社による化石燃料産業への支援継続と個人向け火災保険料値上げの矛盾
今回の保険料値上げは、私たち一般消費者の生活に大きな負担となることが予想される一方で、損害保険会社は異常気象増加の根源である化石燃料産業を支援し続けています。
東京海上、MS&AD、SOMPO、AIGの4社は、石油・ガス事業化石燃料産業に対して包括的に保険引受を制限する方針を持っておらず、大量の温室効果ガスを排出する事業に対し、保険を提供し続けています。今回の値上げに関して、消費者に対しては「気候変動の影響により保険料を引き上げざるを得ない」と説明する一方で、化石燃料事業に保険を提供することで異常気象の増加に加担しているのです。保険会社が異常気象の増加を招く化石燃料事業を支援することで、結果として全体的な保険金の支払いが増加し、それが個人向けの火災保険料の引き上げにつながっています。
化石燃料事業は事故リスクが高い事業であるため、損害保険なしに進めることはできません。大手損害保険会社が化石燃料事業への保険提供をやめれば、これらの事業を進めることは難しくなります。損害保険会社はリスク管理のプロとして、化石燃料事業への支援をやめることで私たち一般消費者を気候変動の脅威から守るように行動すべきです。
Insure Our Futureでは、大手損害保険会社に対して、気候変動の主要な原因である化石燃料事業から撤退するよう働きかけを行っています。今後も、国内外のパートナー団体とともに、損害保険会社の化石燃料事業からの撤退を強く要請していきます。