世界的な大手保険会社であるチャブが、環境保護方針を改定し、東アフリカ原油パイプライン(EACOP)への保険引受を拒否しました。RANの記事によると、この決定により、チャブはEACOPから撤退を表明した30社目の大手保険会社となりました。
EACOPの何が問題なのか?
建設が計画されている東アフリカ原油パイプライン(EACOP)は、ウガンダのアルバート湖付近の油田から産出される石油をタンザニアのタンガ港まで輸送する、世界最長(1,443km)の加熱式原油輸送パイプラインです。
パイプラインの建設によって周辺地域の生態系や人々の生活に甚大な被害を及ぼす危険性が指摘されており、「Stop EACOP」をはじめとする世界規模の抗議運動が行われてきました。
EACOPの概要と危険性については、350 Japanのウェブサイトで詳細に解説されています。いくつか例を挙げると、次のようなリスクが指摘されています。
- 年間3,400万トンを超えるCO2の排出
- 建設予定地周辺の住民が住む場所を追われる
- 希少な野生生物が生息する自然保護区を壊してしまう
- ビクトリア湖流域の数百万人の水資源と生活を脅かす
(参照:https://350jp.org/campaign-stop-eacop/)
東京海上のEACOP関与の可能性
東京海上は、EACOPへの保険引受が疑われており、関与についていまだ明確な回答がされていません。国内外の市民団体が数年にわたり不参加の意思表明を求めてきましたが、「個別の案件には答えられない」とコメントしています。2024年2月には「グローバル・ウィーク・オブ・アクション」が行われ、世界31の国と地域で何千人もの人々が大手保険会社に化石燃料事業からの撤退を求めました。
東京海上はこれを受けて2023年4月、気候変動に関する新方針を発表しましたが、残念ながらEACOPへの関与否定が表明されることはありませんでした。Insure Our Futureでは、昨年5月にも東京海上の関与否定を求める記事を公開していますが、それから1年が経過した現在でも、東京海上は環境・人権への深刻な懸念が指摘されているこのパイプライン計画への保険引受を明確に拒否していません。
ブログ記事:東京海上は未だEACOPへの関与否定せず〜ウガンダ出身の活動家ヒルダさんが見た現地〜(2024年5月23日)
世界の大手保険会社・金融機関が次々とEACOPから撤退
一方で、グローバルな保険業界では、すでに多くの企業がEACOPから距離を置いています。先日関与の拒否を公表したチャブに加え、チューリッヒ、アクサ、アリアンツ、ミュンヘン再保険を含む29の大手保険会社がすでにEACOPへの関与を拒否しています。
また、保険会社の他にも、43社の金融機関がこれまでにEACOPへの融資を拒否する意思を表明しており、業界におけるスタンダードが明確に形成されつつあります。日本でも「三大メガバンク」である三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の三行が、この事業への融資を拒否しました。
東京海上は、世界的大手としての責任ある決断を
EACOPのような破壊的な事業への関与を拒否することは、大手保険会社としての責任ある行動です。チャブをはじめとするグローバルな大手保険会社が明確な立場を表明する中、東京海上は沈黙を続けるのか、その動向が世界に注目されています。
東京海上がリーダーとしての役割を果たすことは、日本の保険業界全体にとっても大きな意味を持ちます。30社の保険会社に続き、東京海上がEACOPの保険引受拒否を明言することを私たちは強く望みます。