東京海上ホールディングスが石炭火力発電への引受に関する方針を公表したことを受けて、下記の通りNGO共同声明を発表しました。
2020年9月28日
NGO共同声明:東京海上が石炭火力新方針を発表
~SOMPOに続き2番目、しかしパリ協定の目標とは乖離~
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
気候ネットワーク
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO 350.org Japan
メコン・ウォッチ
9月28日、日本の大手損害保険会社のひとつである東京海上ホールディングス株式会社(以下東京海上)が石炭火力発電への保険引受・投融資を制限する方針*1を発表しました。方針では「石炭火力発電所については、原則として新規の保険引受を行いません」と表明しています。また、原則として新規の投融資も行わないとしています。石炭火力発電に関する保険引受方針を発表したことは、日本の損保業界でSOMPOホールディングスに続き2番目の取り組みです。SOMPOの方針が国内案件や国内外の建設保険に限定していた一方*2、これらの地域・保険種目の例外をなくしたことは歓迎します。
しかし、東京海上の方針では「但し、当該国のエネルギー政策・エネルギー事情や事業継続の事情等を考慮し、OECD 公的輸出信用アレンジメントなどの国際的ガイドラインを参照した上で、総合的に判断し引き受けることがあります。また、既に保険引受を行っている発電所に対しても、温室効果ガスの排出削減・停止につながる先進的な高効率発電技術や二酸化炭素回収・利用・貯留技術(CCUS/カーボンリサイクル)の採用など環境への配慮をエンゲージしていくことで、低炭素化の取組みを支援します」という例外規定が含まれています。Climate Analytics*3によれば、パリ協定の長期目標を達成するためには、先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要があります。世界では、すでに19の大手保険・再保険会社が石炭事業への引き受け停止、あるいは制限を表明しており、パリ協定の長期目標との整合性を確保するためには、例外規定を残している東京海上の方針では不十分です。
さらに、東京海上の方針の対象は新規石炭火力発電事業への保険引受等に限定されており、石炭火力発電への依存度が高い企業や新規石炭火力発電所を計画中の企業向けの保険引受・株式/債券投資については対象としていません。気候危機を悪化させている石炭採掘や他の化石燃料関連事業についても、方針は示されていません。これらの点で、海外保険会社の投融資方針の水準*4と比べると、依然遅れをとっています。
したがって、石炭火力発電や石炭採掘への依存度が高い企業や新規石炭火力発電所を計画中の企業への保険引受・株式/債券投資から撤退する方針を掲げるべきです。また、科学的知見およびパリ協定の目標に基づき、石炭のみならず、炭素排出量の多い他の化石燃料産業への投融資の抑制方針を掲げることが重要です。東京海上には、本発表にある通り、パリ協定に整合した「気候変動を含めた環境への課題解決に向けてリーダーシップを発揮」し、ベトナムのブンアン2石炭火力発電事業を含め新規石炭火力発電事業への保険引受を行わないこと、並びに方針の強化を求めます。
また、日本の大手損保会社であるMS&ADインシュアランスグループホールディングスに対しても、石炭事業や石炭関連企業への保険引受・投資の停止方針策定を求めます。
本件に関する問い合わせ先:
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、田辺有輝
tanabe@jacses.org
国際環境NGO 350.org Japan、横山隆美
taka.yokoyama@350.org
*1: https://www.tokiomarinehd.com/release_topics/release/l6guv3000000bafl-att/20200928_j.pdf
*2: NGO共同声明:SOMPOが石炭火力新方針を発表~日本の損保初、しかしパリ協定の目標とは乖離~ http://jacses.org/765/
*3: https://climateanalytics.org/briefings/coal-phase-out/
*4: 海外の保険会社の石炭方針については、Coal Policy Tool(https://coalpolicytool.org/)を参照ください。