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SOMPOホールディングスの米国リオ・グランデLNG事業への関与事例から見る、気候危機における保険会社の役割

気候危機における保険会社の役割

保険加入者は保険会社に保険料を支払うことで、何らかの被害や損失が起こった場合に補償を受ける権利を得ています。保険会社は私たちの支払う保険料を投資資本として二次投資を行うことで収益を作り、保険金の支払いなどに充てるという仕組みになっています。

私たちが家や車を買う時に保険に加入するのと同様、石炭・石油・ガスなどの化石燃料の施設を運営する事業者も保険に加入しています。化石燃料施設などの大規模施設の建設では、事故が起こった際の影響が大規模になる可能性があるため、公共機関から建設の許可を得たり、銀行などの金融機関から投融資を受けるためには、保険に加入していることが条件となることが多くあります。しかし、保険会社や金融機関が化石燃料事業に対し、保険を提供したり、投融資を行うことは、事業を支援していることになり、間接的に気候変動を加速させてしまっています。反対に言えば、これらの会社が化石燃料事業の持つ気候変動へのリスクを理解し、支援を停止すれば、気候変動の激化を迅速に食い止めることができるということでもあります。

今回の記事では、米国テキサス州で建設が計画されているRio Grande LNG事業とSOMPOホールディングスの関与に焦点を当て、保険会社と気候変動の関係を説明します。

リオ・グランデLNG事業とは?

リオ・グランデLNGは、現在米国テキサス州南部で建設中の液化天然ガス(LNG)の輸出ターミナルです。この事業には、日本の企業も出資しており、三菱UFJ銀行及びみずほ銀行が融資を行い、伊藤忠商事がLNG長期売買契約を締結しています。リオ・グランデLNG事業の操業が開始すれば、製造されたLNGが日本にも輸入され、私達が日々の生活の中で使用する可能性があります。リオ・グランデLNG事業は、気候変動、地域住民の健康、先住民の権利、絶滅危惧種などに多大な影響を及ぼす可能性が指摘されています。

<温室効果ガスの排出による気候変動への影響>

LNGは燃焼時の温室効果ガス(GHG)の排出量が低いと言われてきました。しかし、近年の調査で生産・供給・輸送などを含めたライフサイクル全体を考慮した場合、LNGが気候変動に与える影響は石炭の24倍にも及ぶ可能性があるということが明らかになりました。リオ・グランデLNGも、完成すればライフサイクル全体で1億6,300万トンのCO2を毎年排出すると考えられており、これは石炭火力発電44基分の排出量に相当します。

事業の運営会社であるNextDecadeは、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)により、CO2の排出量を90%以上削減できると謳っています。しかし、この計算ではガスの冷却過程における排出(6~7%)しか考慮されておらず、ライフサイクル全体から見ればCCSによって削減できるCO2はごくわずかであることも指摘されています。

先住民族の人権侵害

現地の先住民族カリソ・コメクルード族は、Rio Grande LNGの建設地が彼らの聖域であるGarcia Pastureの一部であると主張し、建設に強く反対しています。

族長のマンシアスさんも、建設を阻止するために数々の国際キャンペーンに従事してきた一人です。彼らは建設地だけでなく、プロジェクトの資金提供者が多いヨーロッパ各地でも活動を行ってきましたが、事業者は彼らとの対話にこれまで一切応じていません。これは国連の規範が求めている「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意(FPIC)」に反します。

彼らは「輸出ターミナルはラテン系や黒人のコミュニティからの搾取であり、気候危機やヨーロッパの大気汚染を悪化させる」と主張しています。ヨーロッパ諸国が、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの導入を進めることで、テキサスからのLNGを輸入する必要がなくなると提起しています。

「土地が奪われるということは、私たち自身のアイデンティティが奪われるということを意味します。先祖が埋葬され、儀式や儀礼が行われてきた土地をフェンスで囲われ、立ち入りを禁じられているのです。」とマンシアスさんは話します。

SOMPOホールディングスの関与

2024年2月に米国のNGO、レインフォレスト・アクション・ネットワークとPublic Citizenが発表した調査報告書により、日本の大手保険会社SOMPOホールディングスが事業を支援していることが明らかになりました。米国の情報公開法に基づく要請により、港管理当局から情報が開示されました。

昨年末から、Insure Our Futureと現地コミュニティは共同でリオ・グランデLNG事業への保険提供についてSOMPOと交渉を行っていますが、未だにこの事業の保険引受の中止を発表するには至っていません。私たちは、次の3点を含む新たな化石燃料方針の発表をSOMPOに求めます。

  1. リオ・グランデLNG事業の契約更新を行わないことを発表すること
  2. 包括的な石油・ガス事業の保険提供の停止方針を発表すること
  3. 先住民族の権利保護のため「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく合意(FPIC)」を確保すること

私たちにできることは?

Rio Grande LNGの建設による環境破壊や人権侵害を止めるために、私たち1人1人の市民にできることは何でしょうか。現在、レインフォレスト・アクション・ネットワークが、SOMPOを含む大手保険会社にこの事業からの撤退を求める署名活動を行っています。リオ・グランデLNG事業の建設は、気候変動の悪化だけでなく、野生動物の生息地の破壊や、地域住民の権利侵害などの甚大な被害が懸念されます。市民の声は、企業を動かす力を持っています。署名に参加して、私たちと一緒に声を上げましょう!

署名はこちらのページからご参加いただけます(外部英語ページ)

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